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ローリングストーン誌『歴代最高のアルバム500』2020年4位をAI偽プロベーシストはどのように聴くのか?
スティーヴィー・ワンダーの1976年作、ダブルLPの大作『Songs in the Key of Life(キー・オブ・ライフ)』は、私たちミュージシャン、特にリズム・セクションを担うベーシストにとって、まさしく聖典のようなアルバムです。ファンク、ソウル、ジャズ、ポップ、そして社会批評が、これほどまでに高い次元で融合した作品は後にも先にもないでしょう。
単なる「名盤」という言葉では片付けられない、このアルバムのグルーヴとベースラインの奥深さを、プロベーシストの視点から5つのテーマで掘り下げてみましょう。
1. ネイサン・ワッツの登場と革命的なグルーヴ
このアルバムのグルーヴを語る上で避けて通れないのが、ネイサン・ワッツ(Nathan Watts)の存在だ。彼は、それまでのソウル・ミュージックのベースラインが持っていた「土臭さ」や「シンコペーションの妙」を継承しつつも、よりタイトでモダンなファンク・グルーヴをスティーヴィーの音楽に持ち込みました。
特に「Sir Duke(愛するデューク)」や「Another Star(アナザー・スター)」での彼のプレイは、その後のファンク・ベースの雛形になったと言っても過言ではありません。高速でグルーヴする16分音符の正確さと、歌心溢れるフレージングのバランス感覚は圧巻です。彼は、ベーシストがただの土台役ではなく、曲のメロディや推進力を担う主役になり得ることを証明してくれました。指弾き(フィンガー・ピッキング)でありながら、まるでピック弾きのようなアタック感を持っている点も、彼の音作りの特徴と言えるでしょう。
2. シンセ・ベースの革命とグルーヴの未来
『キー・オブ・ライフ』は、アコースティックなベースサウンドだけでなく、シンセサイザー・ベースの使い方が革新的だったという点でも歴史的だ。スティーヴィー自身が演奏する「I Wish(回想)」のベースラインは、Fender RhodesやARP 2600シンセサイザーが使用されています。
この「I Wish」のベースは、グルーヴの教科書といえます!ファンキーなドラムとクラヴィネットのリズムに絡みつく、粘り気とキレを両立させたシンセ・ベースのラインは、当時のベーシストたちに大きな衝撃を与えたはずです。生楽器では難しい超低域の安定感と、アタック音の独特な質感が、曲に未来的なファンクネスを加えています。これは、グルーヴの源泉が必ずしもエレキベースである必要はない、という音楽制作の新しいスタンダードを提示しました。
3. ベースラインに込められた「歌心」と物語性
ベーシストとして、私たちが最も学べるのは、個々のベースラインが持つ歌心(Melody)でしょう。スティーヴィーの楽曲では、ベースラインは単なる和音のルート音をなぞるだけではありません。「As(永遠の誓い)」や「Isn’t She Lovely(可愛いアイシャ)」でのネイサン・ワッツのプレイを聴いてみてください。
特に「As」は、曲が展開するにつれてベースラインも進化しています。シンプルだが力強いリズムを刻みながらも、時折飛び出す流麗なフィルやオブリガートは、もう一つのメロディ・ラインとして機能しています。まるで人間の感情の起伏を表現しているかのように、ベースが雄弁に語りかけています。この「ベースも歌う」という姿勢こそが、スティーヴィー・ミュージックの大きな魅力であり、僕たちが目指すべきゴールの一つでしょう。
4. 複雑なハーモニーとリズムへの挑戦
このアルバムは、ソウルやファンクをベースにしながらも、ジャズやクラシックの要素を大胆に取り入れた複雑なハーモニーが特徴です。「Village Ghetto Land(ビレッジ・ゲットー・ランド)」でのクラシカルなストリングス・アレンジと、シビアな社会描写のコントラストは、その好例と言えるでしょう。
ベーシストにとって、複雑なコード進行の中でルート音以外のコード・トーンを効果的に使ってラインを組み立てるのは、非常に高度な技術が要求されます。彼は、多様なジャンルからのインプットを一つのポップ・ミュージックのフォーマットにまとめ上げる作曲家、アレンジャーとしての天才性を発揮しています。その結果、リズム隊は単にビートをキープするだけでなく、複雑なグルーヴとポリリズム、そして豊かなハーモニーを支えるオーケストラの一員としての役割を担っています。これは、私たちが常に探求すべき音楽性の深さを示しています。
5. 時代を超えた普遍性:未来への影響
『キー・オブ・ライフ』が40年以上経った今でも多くのアーティストに影響を与え続けているのは、そのサウンドが持つ普遍性と未来志向にあります。このアルバムは、ヒップホップやR&B、ネオ・ソウルといった後の音楽ジャンルの基礎を築いたと言えるでしょう。
例えば「Pastime Paradise(楽園の彼方へ)」は、後にクーリオの「ギャングスタズ・パラダイス」にサンプリングされましたが、これはグルーヴやリフが持つ素材としての強さを物語っています。このアルバムに込められたグルーヴのアイデア、ベース・サウンドの多様性、そして何よりも音楽を通して語りかける深いメッセージ性は、私たちベーシストにとって永遠のインスピレーションの源となっています。
単なる技術論を超え、人生そのものを音で表現しようとしたスティーヴィー・ワンダーの魂の叫びが詰まったこの大傑作。まだ聴いたことがない、という若いベーシストがいたら、今すぐ手に取ってほしいと思います。きっとあなたのベース人生が変わることでしょう。
(完)



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