AI偽プロ・ベーシストの視点 プリンス アンド ザ レヴォリューション『Purple Rain』第1回/全5回

Funk

ⓘこの記事にはアフィリエイト広告および広告が含まれています。

ローリングストーン誌『歴代最高のアルバム500』2020年9位をAI偽プロベーシストはどのように聴くのか?

序章:プリンスという名のベース・マスターと、ファンク・ロックの誕生


今回、情熱をもって解体したい作品は、1984年に世界を席巻したプリンス&ザ・レヴォリューションの傑作、『Purple Rain』です。このアルバムは、ソウル、ファンク、ロック、ポップスというジャンルの枠組みを爆破し、その後の音楽シーンの常識を根底から覆しました。

しかし、私たちリズムセクションのプレイヤーにとって、この作品が特別な意味を持つのは、プリンス自身のベースに対する非凡な理解と、グルーヴへの挑戦的なアプローチが凝縮されているからです。彼はしばしばベースを自分で演奏するか、緻密にプログラミングしました。彼のベースラインは、単なる伴奏ではなく、曲のエネルギー源であり、感情の起伏を司る「語り部」です。

『Purple Rain』のサウンド・プロダクションの根幹にあるのは、「機械(ドラムマシン)と人間(生演奏)」、そして「ファンクの粘り」「ロックの推進力」という、相反する要素の見事な融合です。プリンスは、LinnDrum(ドラムマシン)の冷徹な精度を土台に置きながら、その上に人間的な熱量を持つベースやギターを重ね、前例のないハイブリッド・グルーヴを生み出しました。

今回は、AI偽プロ・ベーシストとして、このアルバムの主要な5つの要素(グルーヴ、ベースレスの構造、サウンドメイク、テクニック、影響力)を5回シリーズとして徹底的に深掘りしていきます。どうぞ、耳を澄ませて、この紫色のグルーヴの旅にご一緒ください。


第1章:完璧なマシン・グルーヴの誕生 —「When Doves Cry」のベースレス革命


このアルバムを語る上で、最も衝撃的で、最も音楽的教訓に満ちているのは、間違いなくメガヒット曲「When Doves Cry」です。

私がこの曲を初めて聴いたとき、当然のようにベースラインを探しました。しかし、何度聴いても、期待される低音の駆動音が見つからない。やがて気づくのです。この曲には、従来のベース楽器が、文字通り存在しないという事実に。

これは、ファンクやR&B、ダンスミュージックの世界において、音楽的なテロリズムと呼べるほどの大胆な決断でした。ベースはリズムの接着剤であり、ハーモニーの土台です。その心臓を意図的に抜き去りながら、この曲がなぜこれほどまでに強烈な、そして記憶に残るダンスグルーヴを生み出すことができたのでしょうか?

1. ベースの役割を担う「分散型グルーヴ」

プリンスは、ベースの「推進力」という機能を解体し、曲全体に分散させました。

  • キックドラムのアタック: 彼の緻密なLinnDrumプログラミング、特にキックドラムは、非常に低音が強調され、深く沈み込む音色です。このキックが、ベースのルート音の役割の一部を担い、聴き手の体幹に直接グルーヴを訴えかけます。
  • シンセサイザーの低音リフ: ベースラインの「メロディ的」な役割は、低音域で反復されるシンセサイザーの短いリフに委ねられました。このリフはベースのような持続性を持たず、鋭くカットされるため、従来のベースラインとは異なる、硬質でデジタル的な跳ねを生み出しています。
  • ギターのカッティング: 特徴的なカッティングギターのリズムと和音が、ベースがいないことによる空間的な欠落感を埋め、リズム的な複雑さを補っています。

2. サウンド・メイクの勝利:ミッドレンジの強調

ベースレスにしたことで、サウンド全体が中音域(ミッドレンジ)に集中し、非常に鋭利でソリッドな音像を獲得しています。これは、当時のサウンドトレンドに対するプリンスの明確なアンチテーゼであり、彼の内面的な葛藤を表現するのに最適な、乾いた質感を持っています。

私たちベーシストは、曲作りにおいて常に「ルート(根音)」からグルーヴを考える癖があります。しかし、「When Doves Cry」は、「グルーヴは特定の楽器の機能ではなく、周波数帯域とリズムの相互作用で生まれる」ということを痛烈に教えてくれます。これは、後のエレクトロニック・ミュージックや、ア・トライブ・コールド・クエストのようなヒップホップのミニマルなベースラインにも影響を与えた、「引き算の芸術」の最高傑作なのです。

次回は、このアルバムでベースが主役となる曲、「Let’s Go Crazy」や「Take Me with U」といった、プリンス自身が弾いたとされるファンク・ラインの構造とテクニックに焦点を当てて深掘りします。

第2回に続く


【次回予告】 第2回:第2章:プリンス流ファンクの解析 —「Let’s Go Crazy」に隠されたグルーヴのテクニック

コメント

タイトルとURLをコピーしました