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日本の敏腕音楽プロデューサー「富田ラボ」のアルバム「Shipbuilding」「Shiplaunching」「Shipahead」をAI偽プロ・ベーシストはどのように聴くのか?
イントロダクション:音楽の「船」を支える確固たる低音
日本の音楽界において、冨田ラボこと冨田恵一さんの存在は、まさに音の建築家と呼ぶにふさわしいでしょう。その緻密で色彩豊かなサウンドプロダクションは、常に最高峰のクオリティを誇ります。今回、書き記したいのは、氏のキャリアを象徴する3部作、『Shipbuilding』、『Shiplaunching』、そして『Shipahead』です。
これらのアルバムは、単に豪華なゲストボーカルが並ぶ「プロデューサー作品集」に留まりません。そこには、冨田ラボさんが築き上げた強固なサウンドの土台、すなわちベースラインの妙技が光っています。この「Ship」シリーズを聴くと、私はいつも「ああ、なんて贅沢なグルーヴなんだ!」と身震いするのです。
『Shipbuilding』:精巧な「船の建造」に見るルーツ
2003年にリリースされた記念すべき1stアルバム『Shipbuilding』は、そのタイトル通り、冨田ラボサウンドの構造が、まさに丁寧に「建造」されていく過程を聴く者に示します。
このアルバムのベースラインを聴いて、まず感じるのはグルーヴの精度と音色の豊かさです。特筆すべきは、全編にわたって流れる洗練されたフュージョン・テイスト。ここで強く感じられるのが、偉大なる先駆者、チャック・レイニー (Chuck Rainey) の影響です。
チャック・レイニーからの影響
チャック・レイニーといえば、その「歌うような」シンプルかつファンキーなラインで、数多くの名曲のボトムを支えてきた伝説的ベーシストです。彼のスタイルは、ルート音を基本としつつも、絶妙なゴーストノートやリズムの隙間を使いこなし、曲全体に安定感と推進力を与える点にあります。
『Shipbuilding』におけるベースも、決して派手ではありませんが、そのタイトネスと、楽曲のメロディやハーモニーを最大限に生かすための「引き算の美学」が際立っています。例えば、アコースティックなグルーヴの曲での、音の粒立ちの良さと、リズム隊全体を引っ張る強いドライブ感は、レイニーが追求した「ソウル・ミュージックにおけるベーシストの役割」を、現代のJ-Pop/R&Bのフォーマットで見事に再構築していると言えます。
『Shiplaunching』:進化と「船の出航」が示すアプローチの拡大
2ndアルバム『Shiplaunching』 (2006年) は、サウンドのスケールが一段と大きくなり、まさに「船の進水」を思わせるダイナミズムを帯びています。ここでは、前作の基盤を土台に、よりアグレッシブでテクニカルな要素が加わり、ベーシストとしてより複雑なフレーズへの挑戦が見て取れます。
ジャコ・パストリアスからの影響
このアルバムで顕著になってくるのが、ジャコ・パストリアス (Jaco Pastorius) の影響です。もちろん、ジャコのようなアクロバティックなソロが多用されているわけではありませんが、そのエッセンスは、主に以下の点に現れています。
- フレットレス・ベースの使用: いくつかの楽曲で聴かれる、あの「歌う」フレットレス・ベースのトーンと、グリッサンドやヴィブラートを多用したメロディックなラインは、ジャコが確立した手法そのものです。フレットレス特有の官能的な響きが、楽曲の情感を深く掘り下げています。
- カウンター・メロディとしてのベースライン: 単なるルート弾きに留まらず、ボーカルや主要な楽器のメロディに対して、対旋律 (カウンター・メロディ) として機能する複雑なパッセージが増えています。これは、ジャコがウェザー・リポートで実践した、ベースを「第二のリード楽器」として昇華させるアプローチに通じるものです。
特に、よりメロディックで動きのあるベースラインが要求される楽曲では、その正確無比なピッチ感と流麗なフレージングに、冨田ラボさんの技術と音楽的知性が凝縮されていると感じます。チャック・レイニーがボトムを固める「職人」の側面なら、ジャコ・パストリアスは音楽全体を再定義する「革命家」の側面であり、この両極端な影響を巧みに融合させているのが、この時期の冨田ラボサウンドの魅力です。
『Shipahead』:時代と融合し「船が未来へ向かう」極致
そして、2010年の3rdアルバム『Shipahead』。ここでは、冨田ラボサウンドが完全に時代と融合し、未来へと舵を切る姿が描かれています。前2作で培われた生演奏のグルーヴと、最先端のデジタルプロダクションが見事にブレンドされています。
「ハイブリッド・グルーヴ」の完成
このアルバムでは、生ベースの暖かさやグルーヴ感は残しつつも、シンセベースの重低音や、プログラミングされたドラムやパーカッションとの完璧な同期が目立ちます。
私がベーシストとして注目するのは、「生」と「打ち込み」のグルーヴの接続部分の処理です。人力では再現困難なタイトなリニアなリズムの上に、生ベースが持つ「タメ」や「揺らぎ」を乗せることで、人間味と機械的な正確さを両立させた「ハイブリッド・グルーヴ」が完成しています。
このアプローチは、両巨匠の影響を超えた、冨田ラボさん独自の「究極の音楽的ディレクション」の証です。レイニーの安定感と、ジャコのメロディセンスを、現代のサウンドスケープの中でいかに活かすかという解答が、ここには詰まっています。ベーシストは、この作品から、「自分のグルーヴを、楽曲全体の中でどう配置し、デジタル環境の中でどう生かすか」という、現代的な問いへのヒントを得ることができます。
結び:ベーシストへのメッセージ
冨田ラボさんの「Ship」3部作は、単なるJ-Popの良質なアルバムという枠を超え、ベースラインの教科書としてベーシスト全員が聴くべき作品だと断言できます。
- 『Shipbuilding』からは、ファンク/ソウルの伝統的なグルーヴの「確固たる基礎」。
- 『Shiplaunching』からは、フュージョン・ベースが持つ「表現の豊かさ」と、楽曲における「メロディメーカー」としての役割。
- 『Shipahead』からは、デジタル時代における「グルーヴの最適解」と、「ハイブリッドサウンド」への対応力。
これら全てが学べるのです。
私たちは、往年の巨匠たちから多くを学びますが、それを「今」の音楽にどう活かすかが重要です。冨田ラボさんは、チャック・レイニーとジャコ・パストリアスという二人の偉大な船長から受け継いだ技術と哲学を、見事に現代の音楽という名の「船」に乗せ、新しい地平へと出航させました。この素晴らしい低音の旅路に、心から敬意を表します。
(完)


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